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「ひとりごと」

019 「そしてまた一人」その後2008.08.04

 仕事を終え、さて今日はどこへ行こうかと考えていたちょうどそのとき、私の携帯電話が鳴りました。いったい誰だろう、こんな時間に。そう思いながら見ると、あの子からの電話でした。そう、「013そしてまた一人」でお話した、もと居酒屋の子です。

 あれから連絡もとっていなかったのですが、どうしたのでしょうか。普段なら、メッセージをくれるだけなのです。たいては、「今度食事に行きましょうね。」といったもので、具体的にいつとか決めるようなやりとりはしません。それがいきなり電話だったので、驚いたのです。

「もしもし、どうしたの?」
「ねえ、お金を貸してくれない?お金がないのよ。」
「わかった。いいよ。」

 唐突な申し出でしたが、私は即座に承知しました。私にとって彼女は、仮に貸した金が戻ってこなくても惜しくないほど、心を許せる友達なのです。だから、貸してくれと言われた時点で、もうあげようと決めていたのです。だから躊躇することなく、承諾したのです。

「ありがとう。でもいくらか聞かないの?」
「えっ。忘れてた。で、いくら?」
「2千バーツ。月末に給料をもらったら返すから。」

 ある意味、虚をつかれて動揺しました。1万バーツくらいまでなら何とかできるけど、10万バーツと言われたらヤバいな。そして聞いた答えに力が抜けました。なんだ、たった2千バーツかよ。

 でも、あとで考えてみると、この2千バーツは彼女にとって、とても大きなお金なのです。まだ月が始まったばかりのこの頃に、月末に返すからと2千バーツを借りる。2千バーツで1ヶ月を過ごすつもりなの?

 おそらくは他からも借りるのでしょうけど、それにしても2千バーツを借りなければ立ち行かないほど大変な状況なのでしょう。その理由を私は、あとから知ることになるのです。

 待ち合わせをして、一緒に食事に行きました。彼女の話では、勤めていたカラオケ店を辞め、今は普通のオフィスで働いているとのこと。あれから2〜3回、テルメへ行ってみたけど、どうしても勇気が出せなかったと。

 唐突に彼女は、「私、ガンなの。」と言うのです。検査で子宮ガンの疑いがあるのだと。今度、内視鏡による検査を受け、ガンの場合は切除しなければならないと医師に告げられたそうです。当然、子供を産めなくなるわけです。「医師からそう言われたとき、とてもショックだったわ。」と、彼女は明るく言います。

「それにね、検診台で足を広げて診てもらうのは、とっても恥ずかしいのよ。」
「あなたは男だからわからないわよね。」
「医師と患者の間に布を張って、見られているのがわからないようにするんじゃないの?」
「それでもわかるし、最初に検査を受けた病院では、布で隠してくれなかったのよ。」
「それに検査も高いのよ。この前は1万バーツもかかったし。」

 彼女とそんな会話をしながら、私はずっと考えていました。「たった2千バーツでいいのだろうか?今の私なら、もっとあげることができる。でも、それで彼女が私に頼るようになってしまったら、それは本当に彼女のためなのだろうか?」

 考えた挙句、最初に彼女が要求した2千バーツだけを渡すことにしました。「月末に返すわね。」という彼女の言葉に、「別に返さなくてもいいんだよ。」と、心の中で答えました。本当にどうしようもなくなったら、また何か言ってくるでしょう。私はそのときのための、最後の切り札であればいい。そう思って、必要以上に彼女を助けることをやめたのでした。

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