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「今日のゴーゴーバー」

068 涙の訳(ソイカウボーイ) 2008.05.08

 週末ではないものの、木曜日ともなればそれなりに客が多いはずのソイカウボーイ。ですが、この日はちょっと少なめです。女の子も、いつもより少ない感じです。給料をもらったし、連休の客も帰ったし、ちょっと休むかなってとこでしょうか。

 ソイカウボーイの行きつけの店で、いつものように飲んでました。滅多に自分からは誘わないのですが、ちょっと気になってその子を席に呼びました。明るくひょうきんな子なのですが、この日はなんだか遠慮している感じがしたもので。

 隣りに座ってもらい、コーラをご馳走しました。たわいもない会話の後、ふと、その子が恋人とケンカ別れをしたことを話し出したのです。前の日、田舎の恋人と電話で話しをしたら、新しい彼女ができたみたいで、激しくやりあったのだそうです。それで、失恋したのだと。

 無理に笑顔を作ろうとしていますが、目には涙があふれんばかりです。その電話の後、どれだけ泣いたことか。テキーラを1本飲み干したそうです。同い年の彼氏のことです。彼女がいない間、寂しかったのかもしれません。つい他の女の子が気になってしまったのでしょうか。

 これで失恋は2回目だと言ってました。「あなたは何回失恋したことがあるの?」そう聞かれて、10回くらいはしたかなと答えました。大小合わせれば、そんなものでしょう。「そのときどうだった?」「もう泣きはらしたし、悲しくて息もできないほど辛かった。」「そうでしょう。」

 彼女は、私も同じ経験をしていることに、仲間意識を感じたようです。「でもね、すぐに元気になったよ。それに、何回も失恋していると慣れるし。」「ほんとう?私は今でも泣きそうよ。」「大丈夫。今度は、もっと素敵な恋人ができるよ。」

 言葉で慰められても、傷ついた心が簡単に癒えるわけでもありません。会話が途切れると、また彼氏のことを考え込んでいるようでした。「彼氏は、あなたの仕事の内容を知ってるの?」「まさか。言うわけないじゃない。」「だったらお互い様とも言えるよね。」「どうして?違うわよ。」

 自分が体を売る商売をしていても、それは彼氏に対する裏切りだとは思っていないのでしょう。体は売っても、心は売らない。そんな気持ちなのかもしれません。体を売るのは生活のため。だからしょうがない。そういうことなのでしょう。

 「ねえ。今度かっこいい恋人を紹介してよ。」「紹介しなくても、客の中に候補がいっぱいいるじゃない。今度は、もっと年上にしたら?たとえばオレとか。」そんな冗談を交わして、彼女はまた他の客のところへ行きました。しばらくすると、私服に着替えて出てきました。どうやらペイバーされたようです。

 失恋も何度か経験すれば、その痛みすら楽しむことができるようになります。ですが、まだ若い彼女には、そこまでの余裕はないでしょう。仕事に打ち込めば、だんだんと胸の痛みも薄れていきます。まだ何度か、悲しみに涙を流すことでしょうけど、それも少しずつ少なくなっていくことでしょう。

 20歳前後の、どこにでもいるような女の子。田舎から金を稼ぐためにバンコクに出てきてはいるものの、心はいつも故郷にあるのかもしれません。キットゥン・バーン。キットゥン・ポー・メー。キットゥン・フェーン。(คิดถึงบ้น คิดถึงพ่อแม่ คิดถึงแฟน)


※キットゥンは「恋しい」とか「会いたい」という意味です。バーンは「家」ですが、キットゥン・バーンと言うときは、故郷の家とか家族が恋しいという意味になります。ポーはお父さん、メーはお母さんです。フェーンは「恋人」という意味です。

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